中国俗文学研究会ブログ

中国の近世文学作品を読む研究会、通称「俗文研」です。

俗文研の刊行物(2013−2015)

中国俗文学研究会は、1〜3年に一号のペースで、会誌『俗文学研究』を刊行しています。

また、金丸邦三先生の編になる注訳本二種も近年刊行されたばかりです。

そんな俗文研の最新の成果をご紹介します。

 

『中国俗文学研究』第二十二号(2013年4月発行)

望江亭劇注釈:研究会会読

『楊家将演義』再考 ―《北宋志伝》と《楊家府伝》をその対象として―:平原真紀

「三言」「二拍」における僧尼と道士:笠見弥生

閩南口承文芸「講古」とその登場人物たち ―蔡六舎と露鰻舎― :三浦久仁子

厦門の地方劇模様 ―歌仔戯を中心に― :川島郁夫

 

金丸邦三編『注訳 竇娥冤(中国俗文学研究会単刊1)』(2013年7月発行)

 

金丸邦三編『注訳 錯斬崔寧(中国俗文学研究会単刊2)』(2013年7月発行)

 

『中国俗文学研究』第二十三号(2015年3月発行)

舉案齊眉雑劇注釈:研究会会読

明末清初期における媽祖伝説の変容 ―媽祖の出生故事を例に―:川島麻衣

明清戯曲における白蓮教女頭目の描かれ方 ―「女拐男」話柄を手がかりに―:千賀由佳

《水浒传》中的使役句 ―以用“着”的双音节使役动词为中心―:今村圭

 

上記の書籍は、東方書店https://www.toho-shoten.co.jp)ほかで取り扱いがあります。

金丸邦三先生追悼

先だって、中国俗文学研究会の生みの親でおられる金丸邦三先生がご逝去されました。

ここに追悼文を掲載し、謹んで会員一同の哀悼の意を表します。

 

 

 去る2015年4月23日、中国俗文学研究の設立者である東京外国語大学名誉教授の金丸邦三先生が逝去された。数年前に体調を崩され、ご自宅での休養・加療を続けてこられたが、ご家族や本研究会会員の切なる願いも空しく、遂に不帰の人となられた。無念至極である。

 金丸先生はわが国における中国近世語研究、とりわけ元代戯曲語彙研究の分野では数少ない本格派の研究者であり、その博学多識を慕う大学院ゼミ生の有志数名が、先生にお願いして元雑劇講読会を始めたのが本研究会発足のきっかけである。講読会は年に春夏2回の合宿による勉強会活動に発展し、参加者はその後10年間の優に100人を超える。当初の合宿は、まだ40代の少壮気鋭であった金丸先生の叱咤激励を受けながら、若手研究者や院生たちが難解な元雑劇解読に敢然と挑むといった態であった。時に一日10時間以上にも及ぶ過酷な勉強会で、この合宿が研究会参加者にもたらした恩恵の大きさは計り知れない。

 その後、講読会の常連となった数名が金丸先生を主催者と仰いで1983年に本研究会を結成、会誌『中国俗文学研究』創刊号が発行された。爾来40余年、月例の勉強会と合宿での会読記録をもとに元雑劇一本の語釈をまとめ、会員たちの書き下ろし論文を併せたスタイルで、現在第23号の刊行までこぎつけている。毎回、編集発行作業で右往左往しながらも会誌が命脈を保ち続け得ているのは、間違いなく金丸先生の近世語研究にかけるひたむきな情熱と、本研究会に寄せられたこよなき愛情の賜物である。

 長年にわたり先生に親しく教えを乞い、常に若々しく颯爽としたお姿を知る者にとって、此の度のご逝去は余りに急と言わざるを得ない。心から冥福をお祈りしてやまない。(研究会代表)